「薬(くすり)」の起源
古代には草根木皮(そうこんもくひ)から採薬を行い、しかも最初は世界各地とも苦い薬から始まったという。ギリシャの医聖ヒポクラテスや支那の三皇五帝のうち神農は、ともに初めて医薬を民に教えたと伝えられている。
日本では大国主命(おおくにぬしのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)が神薬の祖として知られているが、いずれも初めは苦い薬であったということである。したがって、「良薬は口に苦し」と言う諺が生まれたのであろう。
また、薬物と言う文字は『日本書紀』の欽明天皇14年(553)6月のくだりに「また卜書暦本種種の薬物を付送すべし」とあるのが始めである。
薬の語源については、色々な説があり、たとえば平田篤胤は「クスリという詞は貼(つけ)ることの古語であり、古くはクスリまたクスネとも通はして言う」と言い、佐藤方定は「クスリといふ原義(もとのこころ)は令和(なぐし)の意であり、それは神を和し、人を和め、風の和、波の和などの和(なぎ)にて、体言になればナグシなり」と言っている。