「言文一致の小説(げんぶんいっちのしょうせつ)」の始まり
言文一致とは普段使っている話し言葉によって文章を書くことを言う。明治時代の文学者として有名な山田美妙が明治19年(1886)10月に発表した『少年姿』には独特の口語文を用いて、初めての言文一致の小説として好評を博した。次いで明治21年8月に読売新聞社から発行した最初の短編集『夏木立』はその好例として世評が高く、また用いた修辞法(言葉を効果的に使って適切に表現すること)は新奇を究め、「車夫は汗を拭き拭き襦袢のシミの材料を我知らずつくっています」とか「欠伸(あくび)の元素」とか「笑窩(えくぼ)の校正」などの珍語を得意として用い、山田美妙の名は年少でも文学界に知れ渡った。