「衾(ふすま)」の始まり
被(ふすま)または寝衣(よぎ)とも言い、臥裳(ふすも)の意味である。四角形に縫い、縁も袖も無く、寝る時に身体を被うものゆえにこの名があるという。
『古事記』の神代巻に「その后(きさき)、大御酒杯(みさかずき)を取らして、立ち依り指挙(ささ)げて、歌ひ給はく、(中略)綾垣の、ふはやが下に、蒸被(むしぶすま)、にごやが下に、栲被(たくぶすま)、さやぐが下に」とあるのが文献に見られる始まりである。
また、『冠辭考』には「このむし衾、柔(にご)やが下てふは、和(やわ)らかにてあつきふすまと聞ゆるに対すれば、栲巾(たくぬの)のふすまは、さわやかなれば、さやぐが下とはよみ給へるなるべし」とある。
さらに、『万葉集』の東歌に「伎倍(きべ)人のまだら衾に綿さはだ入りなましもの妹が小床に」と詠まれている。