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Channel: 原始人の見聞
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「惚れ薬(ほれぐすり)」の話

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「惚れ薬(ほれぐすり)」の話
 昔からイモリの黒焼きは媚薬として有名であるが、このイモリほど情欲の盛んなものは珍しいと言われ、メスとオスを捕らえ、お互いに青竹の節を隔てて双方を別居させておくと、三夜のうちに節を喰い破って一緒になると言われている。そこで仲良く交尾中のイモリを離別させ、丘陵を隔てて別々に焼くと、その煙がおのずから空中で合して一体になると『和漢三才図会』に書かれている。こうした理由から和合の妙薬と言われるようになったらしい。
 世界における媚薬の本家である支那には色々な話がある。たとえば広東地方には岩山に洞窟が沢山あって、その奥深く昼なお薄暗い中に気味の悪い怪鳥と共にコウモリが棲んでおり、このコウモリは、夏は洞窟から出て野生の荔枝(レイシ)の実を食べ、冬はただ大気を吸うだけであるが、春秋の二季は洞窟内の乳石の精汁を食べて翼の色はネズミに似ている。それから百年も経たものは体の色が赤く、千年を経たものは純白でカササギほどの大きさがある。このコウモリは体の中に陽精が充満していて頭が重いために、いつも頭を下にしてぶら下がっている。そして夫婦仲も頗る睦まじく、その内の一匹を捕らえると、残りの一匹も慕いよってきてすぐに捕らえられる。したがってその肉は補血薬として効果があり、その毛は婦人病を治す妙薬であるし、これを黒焼きにして想う人に振り掛けると、その恋が叶うという。
 イギリスでは鹿の陽物(ペニス)を黒焼きにして振り掛けるが、惚れ薬とは言わないでラブ・フィルターと呼んでいる。さらに面白いのは曼荼羅華(まんだらげ:チョウセンアサガオ)が媚薬として旧約聖書の中に書いてある。
 しかし、素晴らしい効力のある惚れ薬の処方は「丁子一匁、甘松一匁、紫梢花八分、白檀二匁、附子二匁、五八霜二匁、麝香六匁、龍脳八分、海豹肝八分、この九味を粉末にして煉蜜で煉り、土器に入れて地中に埋め、七日ほど経て取り出し、香気のぬけざるように貯えおき、女にたいして何気なく焚けば、女が自然に上気し、惚れること請け合いの霊薬」だそうである。

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