「耐寒救命衣(たいかんきゅうめいい)」の始まり
昭和28年(1953)9月3日に、東京日比谷公園のプールで、広島海上保安庁の堀内司が創案した「耐寒救命衣」の実験が初めて行われた。
これは塩化ビニールで作られ、特殊なパイプで吐き出す息が衣の内側、背と胸に取り付けた四つの袋に入ってふくらむ仕掛けになっている。そして、7分間は水中に潜っていても楽に息が出来るし、どのようなカナヅチでもアップアップすれば、その息が袋に溜まり、必ず自分で浮き上がる。それに胸と腹にタップリ空気が入っているため、どのような寒中でも凍死する心配はなく、もしも船が難破した場合でも安心してドブンと飛び込める。その重さが1.8㎏であるが、たためば僅か弁当箱ぐらいの、まことに重宝なものであった。