「医者の薬料(いしゃのやくりょう)」の話(3)
近代になって、医術は職業化してしまい、医者と患者の関係は金銭によって左右されるようになり、金銭の力によって病気が治ったり治らないような印象を大衆に与えるようになった。
こうして国民生活の最も脅威を感ずるものは医療費であるが、これを上昇させた責任は、むしろ患者側が負うべきではないかと考えられる。たとえば、徒歩で来る医者を軽蔑して、自転車や人力車で乗り付ける医者を高く評価したり、あるいはきちんとした洋服に絹の靴下の医者を尊敬し、実力もないのに大きな事と言い、または言葉を飾ったり、表情を取り繕ったりし、患者を威圧したりこれを煽動する者を名医であると信じ、すこぶる高い広告費を支払って新聞・雑誌に広く自己宣伝を誇大にするものを名医であると誤想したりするが、これらの医者自身の厖大な支出は、実は患者自身が支払うことを忘れているのである。