「欠伸(あくび)」の話
「口あいて五臓見らるるあくびかな」と言う古い俳句にあるように、腹の奥まで覗けるほど、大きく口を開くアクビは、人間が疲労して体内に酸素が欠乏した時に、これを補うために反射的に空気を吸入し、一定の順序を経て急に吐き出す一種の呼吸運動で、哺乳類以外にも爬虫類や鳥類でも起こることが知られている。
よく「アクビをかみ殺す」と言うが、このアクビは意志を持って止められないため、ただ口を開いてアクビをしなかっただけの話である。
殺されたアクビ涙に化けて出る 江戸川柳
江戸時代から「アクビは移る」という言い伝えがあり、元禄4年(1691)4月に堀江林鴻(ほりえりんこう)が著した『俳諧京羽二重』の中に「移すべき欠伸に秋の友もなし」とあり、その言い伝えの古さが判る。アクビが伝染する原因はよく判っていないが、群れを作る動物の間では、眠る時間をお互いに知らせるシグナルになっているという説があり、違う種の間でも伝染し、犬の前でアクビをすると犬もアクビをする。
アクビを利用して健康法を考えた医者にアメリカのカーリー博士がおり、また、1937年にはベルリン大学のヒルシュ・トムという医師が、「アクビの科学的研究」で学位を取っている。