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Channel: 原始人の見聞
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「名医の奇術(めいいのきじゅつ)」の話

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「名医の奇術(めいいのきじゅつ)」の話
 遺伝の法則で有名なオーストリアのメンデルは機知に長け、即座に機転を利かせて対応できる人で、いつも巧みに患者を扱うので誠に評判が良かった。
 ある日のこと、顔色が青ざめたヒステリー性の婦人が慌てふためいてやってきて
「先生ッ、大変です。私のお腹の中にカエルが一匹いて暴れ回って困ります。先生、どうかして下さい。早く早く」
とせき立てる。そこでメンデルは悠然として
「それでは貴女がカエルをお飲みになったのですか?」
「いいえ、カエルなんか誰が飲むものですか、どこからか入り込んだものとみえます。嗚呼、苦しい、苦しい」
となかなか強硬である。すると、メンデル先生は益々落ち着き払い
「よしよし、それでは取り出してあげましょう」
と言って、患者に催吐剤(さいとざい:胃の内容物を吐き出させる薬)を飲ませた。その間に一匹のカエルを取り寄せ、これを巧みに隠し、やがて患者の吐物を膿盤に受けさせる際に手早くカエルを投げ入れ、まじめな顔をして患者に向かい
「とうとう出ましたよ。ご覧なさい、こいつが貴女を苦しめたんですぜ、憎いやつではありませんか」

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