「私立探偵(しりつたんてい)」の始まり
民間調査機関の一つで、日本では明治28年(1895)の春に岩井三郎という人が私立探偵所を東京市京橋区五郎兵衛町二十二番地に設けたのが始まりである。その人の話によると「実際の探偵の仕事は極く地味なものであり、官憲が相手を訊問するのとは異なり、裁判関係の事件、家庭的な問題はもちろん、縁談の身元調べにしても、相手に感知されぬように真相を把握することが要件である。したがって、ずいぶん無駄な空回りを演ずることもあり、この間の労苦は並大抵なものではない。必要な人物と面接する場合も、その人の人柄や心理状態を洞察し、みずから相手のペースにとけ込んで、相互の琴線に触れ合ったところではじめて本論に入り、なごやかな雰囲気の内に必要な情報を収集して行くのである」と、誠にデリケートな体験談を語っている。