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「古着市(ふるぎいち)」の始まり

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「古着市(ふるぎいち)」の始まり
 江戸時代初期に、江戸日本橋の鳶沢町(後の富沢町)において行われ、その始まりについて『落穂集後篇』のなかに
「盗賊ども諸方より入り集まり、もってのほか物騒にこれあるよし。権現さま(徳川家康)の御聴きに達し、なんとか致し盗人の張本たる者一人、召捕へ候やうにと奉行中に仰せわたされ候ところ、そのころ関東に名を得たる盗賊の大将、鳶沢と申すものを搦めとり、牢舎申しつけ候と申し上げられ候へば、その盗人を召しいだし、お仕置に仰せつけられ候へども、一命をば御助けなされ候あいだ、其方のはたらきをもって、他邦の盗賊どもの御当地へ入り込み申さざるやうにつかまつるべき旨申しつけ候やうにと仰出され候につき、奉行中よりその趣を申し渡され候へば、鳶沢うけたまわり命をお助け下され候は、ありがたくぞんじ奉り候へども、他方よりいりこみ候あまたの盗賊どもを私一人の力をもってふせぎ候とある儀はまかりならざる儀に候へば、いづれかにおいてなりとも屋敷地をくだしおかれ候はば、私の手下どもを呼びあつめて差し置き、その者どもへ申しつけ吟味いたさせ候やうつかまつりたく候。しかし私の手下のもの共も盗み相とめ候へば、渡世の仕方御座なく候間、御当地にて武家屋敷町をかぎらずほかの者どもの古手をおき候儀を御停止に遊ばされ、私儀を古着買の取締りの役に仰せつけられたしと申すにつき、願いのとほり仰せつけられ、遊女町の近所において一町四方の葭原(よしわら)を屋敷に下しおかれ候につき、それを切りひらきて鳶沢町と名づけ、吟味いたさせ候につき程なく盗賊どもの御当地へいりこみ候儀もまかりならざるごとくにこと鎮まり候となり。さるによって我れら若年の頃までの古着買ひともをすは、定まりて二人連れ立ち布のながき袋をかたげ、一人の若者は「古着」と呼ばり候へば、一人は「買はふ」と申して町屋の軒下を左右へわかれて歩きまをすごとくにこれあり。そのかけ候袋の口をば二つにわり、そのはづれ麻縄にてまき立て、その下に鳶沢が印形これあり候。がんらい盗人にてこれなき素人にても古着売買をつかまつるべくと存ずるものは鳶沢が手下を願ひ、くだんの袋を受けとり申すごとくこれあり候と也」
とあり、いわゆる毒をもって毒を制する家康らしい施政と言うべきである。
 なお、鳶沢は名前を甚内と言い、当時の向崎甚内、庄司甚内とともに、三甚内と呼ばれた一人である。
 また、古着の市場は明治14(1881)頃から神田の岩本町にて開かれるようになったのである。

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