「鼻紙(はながみ)」の始まり
紙を懐に入れて鼻をかみ、あるいは落し紙(トイレットペーパー)に使う日本人の習慣は古くからあるらしい。
林若樹が書いた『集古随筆』によると、支那では1400年前の六朝(りくちょう)時代から既に高貴な者が鼻紙を使っていたとある。
面白いのは、京都の妙法院の宝物のなかに、「豊臣秀吉の御はな紙」というものが一帳あるという。また更に珍しいのはローマのバチカン市国の文書の中に、伊達政宗の使節として渡欧し、元和元年(1615)9月12日にローマ法王ポール五世に謁見したドン・フィリップ・フランシスコ・ハセクラ(支倉常長)一行のことを記載した節に「一行は皆、木の皮製の紙(和紙:懐紙)一帳を有し、その一枚をもって鼻を拭い、そのたび毎にこれを棄てる」とあり、その時の紙数枚をバチカン市国の人種学博物館の日本の部に堂々と展示し、それに「日本使節の用いたハンカチ」と説明が付けられている。