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Channel: 原始人の見聞
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「糊(のり)」の始まり

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「糊(のり)」の始まり
 平安時代中期の完成した『延喜式』の図書寮のところに「凡年料装潢用度、絹五尺、篩糊料、大豆五斗糊料云々」とあり、大豆を糊の原料に用いていたことが判る。さらに内匠寮の屏風を作るくだりには、布を貼るのに糯米(もちごめ)を用いており、紙を貼るのに小麦を用いている。
また彼岸花といわれる曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の根を煮てよく摺り、表具の糊として用いると柔らかで紙質を損じないと言われ、馬酔木(あせび)の樹をせんじつめて白及(ばくきゅう:ラン科の多年草)と明礬(みょうばん)を等分にして煎汁に合わせ、これを糊に加えて使うと紙魚(しみ)の害を逃れることは、徳川光圀(水戸黄門)が佐々宗淳に語った話である。
 衣類には蕨粉糊(わらびこのり)を使うと絹物の艶をだし、さらに生地を固くするという。この蕨粉糊は傘の紙を貼る際に柿渋でのばして用いる。
 製紙の材料として黄蜀葵(とろろあおい)の根を焚いて採ったトロと称するものは紙を漉く時に用い、蒟蒻玉(こんにゃくだま)で作った糊は紙衣(かみこ)に塗ったものである。また、納豆の糸は古い経巻の脱縫した時、これを修理するのに絶好のものであり、洋紙の光沢と紙質の緊張度を増加させるために甘藷(サツマイモ)や馬鈴薯(ジャガイモ)で作った澱粉が使われた。また、海藻で作られた布海苔(ふのり)の糊を用いると虫害を受けたり鼠に喰われたりすることが無いと言われている。
生麩の糊は小麦で麩を作る時に、水の底によどんだものをさらしたものに、水を加えて煮て練ったものである。
古糊(ふるのり:または腐糊ともいう)は江戸時代中期からあったらしく、これを作ることは昔から経師屋の秘伝とされていたものである。これは毎年節分前の数日に糊焚きをする。釜の中へ生麩粉と水を入れて、よく棒で掻き回しながら薪火で一時間ほど煮ると餅のような固い糊ができる。それを大きな瀬戸物の壷に八分目ほど入れ、紙の蓋をして縁の下の土中に埋め、口元だけを出しておく。それから満一年経ってから蓋を取って表面に浮かんだ黒色の粘質のカビを篦で掻き捨て、再び紙蓋をして放置しておく。これを繰り返して三年を経て残ったのが古糊である。

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