「手袋(てぶくろ)」の始まり
手袋の歴史は古く、紀元前435年から354年にかけて生存していたギリシャの歴史家セノホンが、フェニキア人の贅沢な生活を記した中に「かれらは頭や足を被うのみをもって満足せず、寒気を防ぐために厚い袋でその手までも被った」と書いており、また紀元前116年頃の人ヴァロンも、その著書の中で「赤手(せきしゅ:素手)にて集めた橄欖(かんらん:カンラン科の常緑高木、種子から油を取る)は手袋をはめて集めた物に優る」と述べている。
次いで二世紀頃のローマにいたギリシャの文学者アテネウスは、当時における大食漢のことを書いて「この大食家は、いつも手に袋をはめて食卓に着き、肉が厚くて他の人が手を出せない間に、既に肉を掴んで食べることを常としていた」と呆れた心臓の持ち主のことを書いている。しかし、手袋が一般的に使用し始めたのは九世紀初期からである。
日本では鎌倉時代から武士が武装する時に限って用いられたが、江戸時代の延宝年間(1673~1681)にオランダからメリヤスの手袋(当時は手覆といった)が初めて輸入され、大いに珍重され流行した。これが広く庶民の間に普及したのは明治時代に入ってからである。